第三次月詠聖杯戦争十三日目 夜パート1

  GM  : よし幕間できた。         あげます。
 かつて、人と神の混ざり合う青銅の時代。  黒海沿岸にアマゾーンという、女性(アマゾネス)のみが住む国があった。  アマゾネスは馬を飼い慣らし、弓術を得意とする狩猟民族で  軍神アレースとニュンペーのハルモニアーを祖とし、狩猟の女神アルテミスを信仰していたという。  その勇猛さ、苛烈さはギリシアのあらゆる部族、国民を凌ぎ  弓引きの邪魔になるため、乳房の片方を切り落とす。男が生まれた場合は奴隷にするなど、数々の残虐な逸話がが伝わっている。  また辺境部族でありながら、ギリシャの都市の戦争に度々参加している。  彼女には、何よりも愛する妹がいた。  アマゾネスの文化には独特のものがある。完全な女系社会であるために、恋愛感情や夫婦関係といったものも女性同士で行われる。  友情と恋情の境目は極めて曖昧だ。  彼女にとって、妹はすべての愛情を注いだ相手だった。  妹も、時期女王であり部族屈指の戦士である姉を、これ以上なく尊敬し、日々精進していた。 (なお、姉はペチャパイであるため乳房を切り落とす必要はなかった)  しかしある日悲劇が訪れる。  姉妹での狩り比べの時。獲物と誤り、姉は妹を射殺してしまったのだ。  彼女が狩人としても類まれなる腕を持っていたが故に、矢は妹を一撃で貫いた。  アマゾネスの流儀からすれば、それは罪に問われるようなことではない。  強いほうが正義という価値観が根本に流れており、妹もまた戦士の一人だったからだ。  だが、だからこそ彼女は苦しんだ。  女王を継承したあとも、誰からも認められない、自らの過ちに苦しみ続けていた。  しかし女王としての立場から、部下にそんなことを告白できるはずもない。  そもそも脳筋部族であるアマゾネスにそんな細かい機微が理解されるかどうかも怪しかった。  ゆえに、その罪を認め、許したのは、アマゾーンの人間ではなく、トロイアの賢王、プリアモスだった。  ギリシャで最高級の教養を納め、長い年月を生きた男性――――アマゾネスの社会にはありえない存在。  彼は王同士の会合の際、ふとした折に彼女と話す機会を得て、彼女の苦しみを看破した。  それが罪であるという概念を教授したのだ。  アマゾネスの社会に、父親という概念はないが――――彼女にとって、トロイア王プリアモスは、そのような存在だった。  ゆえに、彼女はトロイアの一大戦争に参戦した。  言うまでもなく国家ではなく個人の事情であり、だからこそ彼女は軍を率いてトロイアに乗り込むようなことはしなかった。  どうしてもとついてきた親衛隊12人のみを率いての参加であり、戦力的には微々たるものでしかない。 (なおこの判断は、トロイア戦争が極めつけの私情で発生したことを考えれば、特筆に値する割り切りである。  王が私用で郡を動かすのが当たり前の時代なのだ)  それでも、彼女は勝って勝って勝ちまくった。  鋼の疾風となって、トロイアに攻め寄せる軍勢を、寡兵でもって何度もなぎ払った。  その果てに正真正銘の大英雄と一騎打ちとなり――――そして敗れた。  その最期に後悔などあるわけがない。  自らが受けた恩を返すために一人の戦士として戦い、そして果てた。  巻き込んでしまった部下に関しても、彼女たちはすべて納得ずくでついてきたのだ。それを否定するのは戦士としての侮辱に当たる。  恩人であるトロイア王を守りきれなかったことも……悔しいが、力及ばなかった結果なのだから、納得している。  ゆえに、彼女には聖杯にかけるような願いはない。  召喚に応じたのは、ひとえにマスターの『妹を助けたい』という願いによってだった。  主が妹を守るために行動している限り  そして彼女の戦士の名誉を傷つけない限り  アマゾネスの女王、ペンテシレイアは――――最後の最後まで戦い続けるだろう。

13日目 夜 港湾区/港


 日が落ちた港の一角。  普段着姿のランサーと籐河が、埠頭に座って海を眺めていた。  法鈴の姿はない。決闘場所に定めたこの場所に、結界を『持ってくる』ために、この場にはいない。  結界造りを生業とする赤座家の技法は、霊地と結界の場所を移動させる域にまで達している。  イメージとしては治水工事のようなものだ。陣地を用いて河水の流れを塞き止め、誘導する。  聖杯戦争は主に地上で行われていたために目立たなかったが、この町の地下にはいたるところに赤座家の結界が敷設されていた。  そのうちのいくつかを解放し、地脈の流れを変更するために赤座法鈴は街中を走り回っている。 (霊地の変更は本来日数をかける作業なので、ダイナマイトで吹き飛ばすような荒っぽさではあるが)  決闘に際してこの場に霊地と陣地が間に合うかはやや微妙なタイミングではあるが。  法鈴がそこまで陣地にこだわるのは、結界師としての誇りもあるが、単純に勝率のためだった。  はっきり言ってランサーは弱い。  この聖杯戦争に参加したサーヴァントの中で、戦闘能力のみで比べるならば、下から数えたほうが早いだろう。  加えて籐河自身も下から数えたほうが早いマスターだ。というか最弱だ。  法鈴が籐河に提供した『令呪4画』でも、なお埋められない戦力差だろう。  それをひっくり返すことの出来得る手札があるとしたら、籐河が現在所有している赤座家の最終個人結界『赤王刹那』しかない。  ただし原理上、赤王刹那は赤座家の結界内でしか全力を発揮できない。だからこそ法鈴はこれだけ結界で戦うことにこだわってるのだ。  だが 「赤王刹那は使わねえ」 「……どうして?」 「つーか使えねえだろ……元々これは親父の形見で、クレダ達が俺に渡してくれたんだからよ。  それ使って戦おうだなんて……筋違いにもほどがある」 「……たしかにそれは、私から見ても恥知らずだね」 「……」 「けど、トーガ。トーガは何のためにクレダと戦うの?」 「なんでって……」 「理由はなんだっていいよ。トーガが本気でさえあるのなら……でも、本当に本気なの?」 「俺は、別に……」 「どうしてさっき、クレダにあんなことを言ったの?  戦う理由なんて、戦いが終わったあとに言えばいいことだった。  だってこの戦いは避けて通れないんだから。あんなのはただの泣き言でしかなかった」 「けど……理由を話せばあいつだって……賛成したかもしれないだろ」 「でも、無理だった」  ランサーは立ち上がり、埠頭に座る籐河を冷たく見下ろした。 「結局トーガは本気じゃないんだよ。  私が勝っても、セイバーが勝っても、ユイは助かる。それさえ叶うなら、あとはどうでもよかったはずなのに。  今のトーガは、余裕が出来たからクレダも助けたいって……子供みたいに欲張りになっただけ」 「そんなこと……ねえっ!  ガキじゃねえんだ」 「なら、甘ったれたことを言わないで。  この戦いの結果。私かセイバー、どちらかは消える。  そして私たちが勝ったのなら、何が何でもバーサーカーを倒さないといけない。  それができたのなら、トーガは聖杯を……世界を左右する力を握ることになる。  トーガにはその覚悟があるの?  本当に?」 「……あるさ」 「なら、命を賭けて」 「命……だと?」 「そう、命。トーガが本気なら、それくらいは賭けて。  それが戦士としての最低限の条件だよ」 「もしも負けたら……腹を切れってことか」 「勝っても、だよ。トーガが勝った結果、取り返しのつかないことになったら……その時はトーガに、死んでもらう。  だってこれはトーガのワガママで始めた戦いなんだから。  結果何が起ころうが、全部トーガが悪いんだよ」 「俺が……悪いか」  籐河がセイバーと戦う道を選んだことに悩んでいない、わけではない。  むしろ一晩中悩み通しての結果だった。  法鈴が提案した『赤座法鈴を根源へ到達させることによる因果の変更』  確かにそれが額面通りに達成されれば、失ったものは戻ってくるだろう。  そして実際、法鈴がその案に本気で賭けていると、籐河は理屈で理解していた。  一応、セルフギアススクロールで『赤座籐河、ランサー、セイバー、赤座結衣、クレダに危害を加えない、嘘をつかない』という制約も課してある。  が、なにより。法鈴は根源への到達にしか興味がないことを、肉親としての付き合いの長さで理解していた。  故に、この期に及んで籐河を裏切る理由が存在しない。  『赤座法鈴を根源へ到達させることによる因果の変更』は、合理的な案だ。  だがそれは、クレダたちに対する裏切り行為ではないか。  最後の最後、この期に及んで悩んでいた籐河の心に、ランサーの言葉はすとんと落ちた。  そんなもの、籐河が悪いに決まっている。  全ての責任は籐河にある。 「……俺は負け続けの人生だったからよ……負けた時のことをどうしても考えちまうんだ」 「この期に及んで、死にたくない、なんて言うの?  今ここで首をはねるよ?」 「命を張る覚悟はある」  籐河は戦闘者としての人生を送ってきたわけではない。  むしろ人生のほとんどをただの学生、ただの教師、ただの一般人として過ごしてきた。  死の恐怖をこんな短期間で克服できるわけがない。  しかし……そこは意地だ。 「命を張る覚悟はあるが……俺は死ねない。腹は切れない。  負けた時、俺が死んでいたら、結衣はきっと不幸だ。だからそれはできねえ」 「言い訳だね」 「ああ。言い訳だ……俺に出せるのはせいぜい」  籐河が立ち上がり、小柄なランサーに向かって右腕を突き出した。 「腕一本。目玉一つ。俺が負けた時は、持っていってくれ」 「……あとで魔術で治療はなしだよ」 「俺の親父の名にかけて、そんなことはしねえ」 「……まあ、ぎりぎり及第点かな」 「それからもう一つ。セイバーとの戦いで、使う令呪は『三つ』までだ」 「どうして?」 「それ以上使ったら、バーサーカーに絶対に勝てなくなる。  セイバーに勝つ以上、バーサーカーにも絶対に勝たなきゃだめだ。  逆にセイバーに負けるのなら、令呪を残しておけばきっと役に立つ。  だからセイバーとの戦いで使える令呪は、三つまでだ」 「……負けた時を考える、ってことだね。  私は最後の最後まで勝つ方法を考えるから……正直そういうのは気に入らないな」 「勝ちだけ考えるお前と、勝ちだけ考えられない俺だから、ここまでこれたんじゃねえか?」 「たまたまだと思うけどね……」
  GM  : 法輪から4つもらって、いま5個ある。
  クレダ : 少々メタな視点ですが、こういう会話があったなら…こちらからあえて藤河さんに改めて言うことは無さそうですね。
  セイバー: なんでホーリンそんな持ってるであるか(笑)
  GM  : それはね。あいつ自身もそもそもサーヴァントを呼ぶはずだったからです。だから令呪が三つあった。         でもクロウが掟破りの二期召喚をやらかした。まずそこから法輪の計画はくるっていっったわけですね。         4画目は、藤河から最初に奪ったのを返しただけです。
  クレダ : 聖杯戦争のサーヴァント数上限は飾りだったんですね…
  GM  : 飾りじゃないから法輪が呼べなくなったんですよ。

13日目 夜 港湾区/港


  セイバー: さて。来たであるな。
  GM  : 状況確認からしましょう。         クレダとセイバーは教会によったあと決闘場所に指定された港までやってきました。
  クレダ : 「Swing Low, Sweet Chariot, Coming for to carry me home〜♪」
  GM  : 埠頭には、既にランサーと籐河が待っており、法鈴の姿はありません。         籐河「なんで歌ってるんだ……」         籐河は深刻な顔をしています。
  セイバー: 『来たであるぞ』
  GM  : ランサー「思ったより遅かったね」
  クレダ : 「聞いたことありませんか? “Swing Low, Sweet Chariot”」
  GM  : 籐河「賛美歌か何かか?」
  クレダ : 「ええと、ゴスペルです。訳は、日本語だと、ええと―――揺れる馬車よ、私を故郷に運んでおくれ」
  GM  : 籐河「ドナドナかよ……」
  クレダ : 「黒人霊歌は、奴隷制とは深い関係にありますからね」
  GM  : 籐河「ババアがいないのは気にするな。ここに結界を『持ってくる』ための作業中だとよ」         まだこの場は結界に覆われてるわけではないようです。         ランサー「……もう少ししたら私たちに有利になるけど……話でもしようか?」
  クレダ : 「何か、話すことありましたっけ…?」
  GM  : ランサー「この期に及んで……あるわけがないよ」
  クレダ : 「こちらとしては…しいていうなら、“藤河さんが私のために戦ってくれる”と主張するなら、          先に相談してもらいたかったな〜…ってことくらいですね。          貧困救済活動とかでもよく経験するんですけど、相手のためにやってた行動が、          逆に恨まれたり、変なところから攻撃されたりすることって、少なく無いので」
  GM  : 籐河「わるかったな。先に相談したら何が何でも止められそうだったし……さっき言ったことはできれば忘れてくれ。            俺が勝手にやり始めたことで、別にクレダは悪くねえよ。            まあ……そろそろ始めるか」
  クレダ : 「はいはい」
  GM  : ランサー「テンション……低いね」
  クレダ : 「戦う理由ないですもの」
  GM  : ランサー「私は戦うために呼ばれたようなものだから……戦うことは純粋に楽しませてもらうよ」
  クレダ : 「では、こんな風に言いかえましょうか。…流血を恐れぬならかかって来い。          ただし…たとえ勝算がどれほどのものであれ、タダですむと思わないことです」
  セイバー: 『拙としては、どの道戦う相手であるからな。否やは無いのであるが』
  クレダ : とはいえ、「私が君を殴るのは君を救うためだから!」と言われなかっただけ、まだ気分はいいですね。
  GM  : ランサー「我が名はアマゾネスの女王、ペンテシレイア! 父アレスと母オートレラの名において、推して参るよ!」